代襲相続が発生している場合には、遺産分割においてトラブルが発生することも少なくありません。
このページでは、代襲相続で起こる遺産分割トラブルや、遺産分割トラブルの解決のポイントについて、ご説明させていただきます。

1 代襲相続とは

(1)代襲相続とは

代襲相続とは、本来相続人となる者(推定相続人)が、被相続人よりも前に亡くなっていたり、相続欠格・相続廃除で相続権を失ったりした場合に、その者の子が代わって相続することを言います。

上記の図でいうと、父(被相続人)の推定相続人は、母・長男・長女となります。
ここで、父より先に長男が亡くなっていた場合、父の相続では、母・長女だけでなく、長男について代襲相続が発生して、長男の子も相続人(代襲相続人)となります。

代襲相続人の法定相続分については、推定相続人の相続分を引き継ぐことになります。
上記の例で言えば、母2分の1、長女4分の1、長男の子4分の1、となります。

代襲相続が発生する事情(代襲原因)は、推定相続人が亡くなったという場合がほとんどですが、そのほかに、推定相続人について相続欠格(相続人が民法891条に規定されている重大な違法行為を行った場合に、自動的に遺産を相続する権利を剥奪されること)や、相続排除(被相続人が、相続人から虐待、重大な侮辱などを受けた場合に、家庭裁判所に申立てを行って遺産を相続する権利をはく奪すること)が生じた場合も発生します。

なお、以下では、説明の便宜上、推定相続人が亡くなったという代襲原因を前提に解説していきます。

(2)代襲相続のパターン

先ほどの図のような、父(被相続人)よりも先に子が亡くなっていた場合に孫が相続する、という典型的な代襲相続のパターンに加えて、その他の代襲相続のパターンについて紹介します。

①被相続人より先に、子だけでなく孫も亡くなっていた場合、孫の子(被相続人のひ孫)が相続人となります(このことを、「再代襲」といいます)。

なお、少し細かいところですが、子と孫が養子縁組を行った場合で、その養子縁組の後に生まれた孫の子(養子の子)は再代襲相続人になりますが、養子縁組の前に生まれていた孫の子(養子の子)は再代襲相続人にはなりません。

②推定相続人の中に被相続人の兄弟姉妹がいて、兄弟姉妹が先に亡くなった場合も、代襲相続が発生して、その兄弟姉妹の子(被相続人の甥・姪)が相続人となります。

ただし、被相続人の兄弟姉妹だけでなく、甥・姪も先に亡くなった場合、その甥・姪について再代襲は発生せず、甥・姪の子は相続人にはなりません。

2 代襲相続で起こる遺産分割トラブル

上記の代襲相続のパターンで見てきたとおり、代襲相続が発生している遺産分割では、孫・ひ孫や、甥・姪が代襲相続人となります。
そのため、相続人と代襲相続人との異なる世代間での話し合いが必要となります。
そして、異なる世代間での遺産分割の話し合いでは、次のような問題をはらんでいるため、トラブルに発展しやすい傾向にあると言えます。

・相続人と代襲相続人との異なる世代間では、もともと疎遠であることにより、円滑な話し合いができないことが多い。
・相続人よりも、代襲相続人の世代が下であることにより、相続人が代襲相続人に対して、強引な態度に出ることが多い。
・代襲相続人よりも、相続人が、被相続人と深い関係にあることが多く(介護をしていた、生前贈与を受けていたなど)、法定相続分で分割することが公平ではないと主張されやすい。

このような問題がありつつ、代襲相続で起こる遺産分割トラブルの内容は様々ですが、以下に、代表的なトラブルを挙げます。

①相続人と代襲相続人との間で、全く連絡が取れず、話し合いすらできないパターン
②相続人が、代襲相続人と話し合いをせずに、一方的に遺産分割協議書を送りつけて署名を求めるパターン
③相続人と代襲相続人との間で、介護(寄与分)や生前贈与(特別受益)が主張されて、法定相続分での合意ができないパターン

3 代襲相続で遺産分割トラブルになった時の解決のポイント

上記で代表的な遺産分割トラブルを挙げましたが、次に、それぞれの解決のポイントについて解説していきます。

(1)①相続人と代襲相続人との間で、全く連絡が取れず、話し合いすらできないパターンについて

相続人と代襲相続人との間では、疎遠だった結果、いざ遺産分割の話し合いをしようとしても、全く連絡が取れず、話し合いすらできないことがあります。

このパターンでは、相続人、代襲相続人のいずれの立場であっても、疎遠であった者に対して連絡を取ること自体に気が重く、遺産分割の話し合いに向けた対応をなかなか進められずにいる方もいらっしゃるかもしれません。

この場合、他の相続人との間に立ってくれる人の存在が解決のポイントとなり得ます。
すなわち、全てを自分で行うのではなく、自分に代わって話し合いをしてもらうために弁護士に依頼する、話し合いを整理してくれる第三者(調停委員)を入れるべく遺産分割調停を申し立てる、ということが考えられます。

この解決のポイントについては、次の関連ページで詳しく解説をしておりますので、参考になさってみてください。

【関連ページ】
●面識のない相続人がいる場合の遺産分割
●連絡を無視・拒否する非協力的な相続人がいる場合の遺産分割
●相続人同士が不仲または疎遠な場合の遺産分割

(2)②相続人が、代襲相続人と話し合いをせずに、一方的に遺産分割協議書を送りつけて署名を求めるパターンについて

相続人よりも、代襲相続人の世代が下であるがゆえに、相続人が代襲相続人に対して強引な態度に出やすいことから、相続人が、代襲相続人に対して、一方的に遺産分割協議書を送りつけて署名を求めるということがあります。

代襲相続人の立場で言えば、内容を確認せずに言われるがまま遺産分割協議書に署名をするということは避けるべきです。
一度署名をしてしまうと、遺産分割は成立したものとされて、基本的のその内容を覆すことはできません。
きちんと遺産の内容を把握し、公平な分割内容であるかを確認することが必要です。

そして、強引な態度の相続人に対しては、やはり、間に立ってくれる人の存在が解決のポイントとなり得ます。
自分に代わって話し合いをしてもらうために弁護士に依頼する、話し合いを整理してくれる第三者(調停委員)を入れるべく遺産分割調停を申し立てる、ということです。
この解決のポイントについては、次の関連ページでも詳しく解説をしておりますので、参考になさってみてください。

【関連ページ】
●強硬な主張・要求をしてくる相続人がいる場合の遺産分割

他方で、相続人の立場で言えば、たとえ代襲相続人が下の世代だとしても、すでに決定したことであるかのように遺産分割協議書を送りつけて署名を求めるなどの強引な態度に出ることは、無用のトラブルを引き起こし、遺産分割の成立を遠ざけてしまうことになります。

強引な態度に出るのではなく、言葉遣いを含めて冷静に話し合いをすることが、結果としてスムーズな遺産分割の成立につながる、ということを心に留めておくことが大切です。

(3)③相続人と代襲相続人との間で、介護(寄与分)や生前贈与(特別受益)が主張されて、法定相続分での合意ができないパターンについて

代襲相続人よりも、相続人が、被相続人と深い関係にあったことに起因して、相続人から「介護をしていた」という寄与分の主張がされたり、代襲相続人から「(相続人は)生前贈与を受けていた」という特別受益の主張がされたりして、法定相続分での合意ができないことがあります。

寄与分や特別受益が認められる場合には、遺産分割における取り分を決める際に考慮されます。
しかし、寄与分は、被相続人の世話をしたというのであれば、親族間の法律上の扶養義務を著しく超える程度の扶養を行ったことが必要ですので、認められるハードルはかなり高いと言えます。
また、特別受益を主張する場合には、その証明(証拠)は必ず必要となります。

寄与分の主張も、特別受益の主張も、遺産分割の話し合いを長期化させる原因にもなります。
そのため、ここでは、「自分が欲しい」相続財産の額・割合を主張するのではなく、「自分が主張・立証可能な」相続財産の額・割合を整理して主張することが解決のポイントであると言えます。

4 弁護士にご相談ください

以上のとおり、代襲相続が発生している場合の遺産分割について解説させていただきました。

代襲相続では、通常の相続よりも、遺産分割トラブルが発生しやすい傾向にあります。
そして、代襲相続で遺産分割トラブルになった時には、他の相続人との間に立ってくれる人の存在が解決のポイントとなります。
全てを自分で行うのではなく、自分に代わって話し合いをしてもらうために弁護士に依頼する、話し合いを整理してくれる第三者(調停委員)を入れるべく遺産分割調停を申し立てる、ということが考えられることも解説させていただきました。

この点で、弁護士は、代理人として他の相続人との間に立って本人に代わって遺産分割の話し合いをすることができますし、話し合いで解決しない場合には、代理人として本人に代わって遺産分割の調停や審判の手続きを進めるということができます。
代襲相続が発生している場合の遺産分割でお悩みの方は、まずは、相続問題に詳しい弁護士に相談されることをお勧めいたします。

当事務所では、これまでに、相続問題に関するご相談・ご依頼を多数お受けし、解決してきた実績が豊富にございます。
相続問題を得意とする当事務所の弁護士に、まずはお気軽にご相談いただければと存じます。

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