被相続人の介護や看病に尽くすとか、被相続人の事業に従事するなどして、被相続人の財産の増加や維持に貢献した相続人は、遺産分割において相続分を多くもらえる寄与分の制度があります。
しかし、寄与分が認められるのは、相続人のみです。

また、相続人がいない場合には、被相続人と生計を同じくしていたとか、被相続人の療養看護に努めたなどの特別縁故者は、家庭裁判所に対して相続財産分与の審判を申し立てることで、遺産の一部を受け取ることが可能です。
しかし、特別縁故者に対する相続財産分与が認められるのは、相続人がいない場合のみです。

相続人がいる場合は、相続人以外の者が被相続人の財産の増加や維持に貢献しても、寄与分の制度や特別縁故者の制度の対象とはならないのですが、「特別の寄与の制度」というものが存在します。
特別の寄与の制度とは、相続人以外の被相続人の親族が、無償で被相続人の療養看護等を行った場合に、相続人に対して、金銭(特別寄与料)の請求をすることができるものです。

特別の寄与の制度の適用を受けるためには、以下の3つの要件を満たすことが必要です。

【特別の寄与の制度の要件】
①被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたこと
②そのことによって、被相続人の財産が維持又は増加したこと
③被相続人の親族(6親等内の血族と3親等内の姻族)であること

特別寄与料は、相続人に対して請求できるものですが、請求の可否や金額については、専門的な判断が必要となります。
特別寄与料の額は、寄与の時期・方法および程度、相続財産の額などの事情が算定の要素となります。
また、被相続人が死亡時に有した財産の価額から、遺贈の価額を控除した残額を超えることはできません。
そして、相続人が複数人いる場合、各相続人は、相続分に応じて特別寄与料を負担することとなります。

特別寄与料の請求の手続としては、特別寄与者(請求者)と相続人との間で協議を行うことになりますが、協議がまとまらない場合には、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することになります。
協議を行う場合には、請求の期限はないのですが、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求する場合には、期限があります。
その期限とは、特別寄与者が被相続人の死亡および相続人を知った時から6か月経過したとき、または被相続人の死亡の時から1年経過したときとなります。

特別の寄与の制度についてお困りの方は、まずは専門家である弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。

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