遺産分割後に新たな相続人が判明する場合とは

遺産分割は、相続人全員によることが必要とされています。このため、相続人の誰か一人でも欠けた状態で遺産分割がなされた場合、その遺産分割は原則として無効となります。このことは、協議・調停・審判のいずれであっても同様で、全員が参加した上で遺産分割をやり直す必要があります。

したがって、遺産分割を行う前に、被相続人の戸籍を十分に確認して、相続人が誰であるかを正確に把握する必要があります。被相続人の出生から死亡までの戸籍を調べて初めて、実は隠し子(被相続人が生前に認知した者)がいたという事実を知るケースもまれではありません。

もっとも、十分な確認をしても、遺産分割時には相続人でなかった者が、その後の事情により相続人となる場合があります。たとえば、①相続の開始時に胎児だった者が出生した場合、②死後認知の場合、③母子関係の存在確認の裁判が確定した場合、④父を定める裁判が確定した場合、⑤遺産分割後に離縁や離婚の無効が確定した場合などがあります。

①胎児がいる場合の対応

まず、問題となるのは、被相続人が亡くなった際、胎児認知された子がいて、その後、その子が出生したときにはすでに遺産分割がなされていたという場合です。

法律は、胎児をすでに生まれたものとみなし(民法886条1項)、胎児にも相続権を保障しています。他方で、判例上、出生前の胎児を代理して遺産分割をすることは認められていません。そのため、出生前になされた遺産分割は、胎児の母が胎児を代理してなされていたとしても、相続人が欠けた状態でなされた遺産分割として無効となります。

なお、残念ながら胎児が生きて生まれなかった場合には、その胎児には相続権が保障されていませんので(同条2項)、すでになされた遺産分割は有効となります。

したがって、相続人に胎児が含まれている場合には、胎児の出生を待ってから遺産分割を行うべきでしょう。

②死後認知がなされた場合の対応

被相続人が亡くなった後に認知がなされる場合があります。遺言によって子が認知された場合と、被相続人が亡くなった後に認知の訴えが認められた場合がこれにあたります。

これらの場合には、認知された者は、すでになされた遺産分割の無効を主張することはできませんが、すでに遺産分割を終えた他の共同相続人に対し、自分の相続分に相当する価額を支払うように請求(価額支払請求)することができます(民法910条)。

したがって、死後認知の場合には、すでになされた遺産分割は無効にはなりませんが、他の共同相続人は、認知により相続人になった者からの価額支払請求には応じなければなりません。なお、遺産分割後に被相続人が生前に認知した者がいることを初めて知ったというケースは、相続人の一人が欠けた状態でなされた遺産分割ですので、無効となります。

その他の上記③~⑤の場合の対応

遺産分割後に母子関係の存在確認の裁判が確定した場合や、離縁や離婚の無効の裁判が確定した場合など、遺産分割時には戸籍上存在しなかった人が、遺産分割後に出現する場合があります。死後認知の場合と違い、これらの場合には、民法910条のような価額支払請求に関する規定はありません。

判例は、遺産分割後に母子関係の存在確認の裁判が確定した場合で、死後認知に関する民法910条の類推適用を否定しています。この判例を前提とすれば、死後認知の場合以外の③~⑤の場合は、原則どおり、すでになされた遺産分割は無効となり、判明した相続人を入れて、あらためて遺産分割をやり直す必要があると考えられます。

まとめ

遺産分割を行う前に、まず不可欠なのは、被相続人の出生からの死亡までの戸籍を十分に確認して、相続人が誰であるかを正確に把握することです。そして、十分な確認をしても、今回ご説明したように、遺産分割後に新たな相続人が判明する場合があります。たとえ遺産分割をやり直すことになっても、交渉次第では揉めないで解決することもありますので、遺産分割後に新たな相続人が判明した場合には、なるべく早急に弁護士に相談することをお勧めします。

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