預金の使い込みとは

相続に関連する紛争の一類型として、被相続人の生前に、被相続人の預金を、ある法定相続人(あるいはそれ以外の第三者)が勝手に払い戻して、自分のものにしていた(ことが疑われる)という事案があります。

このような事案について、使い込まれた預金の返還を請求したいというご相談・ご依頼、預金を使い込んだとして請求を受けて困っているというご相談・ご依頼が、当事務所に寄せられることがあります。
預金の使い込みに関してお悩みの方がいらっしゃいましたら、まずは本サイトでの解説を参考にしていただきつつ、法律の専門家である弁護士へのご相談もご検討ください。

なお、被相続人の死亡後の預金払戻については、こちらをご覧ください。
●被相続人の死亡後の預金払戻について

また、被相続人の死亡後に、遺産である賃貸マンションの賃料など遺産収益の使い込みが行われた場合については、遺産収益の分配の問題となりますので、こちらをご覧ください。
●遺産から生じた収益の分配について

問題解決の方法

預金の使い込みによる返還請求のトラブルにおいては、まずは示談交渉による解決が可能かどうかを検討することとなりますが、これが困難であるときは、地方裁判所での訴訟による解決を図ることとなります。
この返還請求の手続は、遺産分割とは別途の手続であるため、家庭裁判所での遺産分割調停や審判で審理されるものではなく、地方裁判所での訴訟となります。
すなわち、遺産分割とは、被相続人の死亡時に存在する遺産をどのように分けるかの手続であるところ、被相続人の生前に使い込まれて失われたとする預金は、遺産分割の対象とはならないのです。

紛争がこのような預金の使い込みの点だけであれば、地方裁判所での訴訟だけで解決が図られますが、ほかに不動産や株式などの遺産がある場合には、別途、家庭裁判所での遺産分割調停や審判の手続を行う必要があります。
このように、預金の使い込みの事案では、制度上は、複数の手続を別の裁判所で行うことが必要となる複雑事案も少なくありません。

しかし、別の裁判所で複数の手続を並行して進めていくことは、当事者にとって多大な労力がかかることも考えられます。
そこで、次の類型のように、ひとつの手続でまとめて解決する運用もよくあります(ただし、当事者間の対立が激しい場合などは、やはり複数の手続での解決を目指していくこととなります)。

複雑事案の手続の類型

①地方裁判所での返還訴訟が先行しているが、不動産などもある

地方裁判所での返還訴訟で返還請求が通るかどうかが審理されるのと並行して、その返還訴訟の和解の席上で不動産なども分ける合意をする。

②家庭裁判所での遺産分割調停が先行しているが、預金の使い込みもある

預金の使い込みの額が少額で、ある程度は返還する意向を示しているときなどは、家庭裁判所での遺産分割調停で、使い込み額を特別受益ととらえて分割の対象とし、調停を成立させる。

③その他

地方裁判所に遺留分侵害額請求の訴訟が提起されていて、預金の使い込みは遺産の先渡し(特別受益)と同視できる場合、使い込み額を遺留分侵害額の計算の基礎として、その遺留分侵害額請求の訴訟内で現実化するなど。

弁護士にご相談ください

預金の使い込みの事案では、お客様のご主張や証拠関係から、適切な解決の見通しを立てつつ、複雑な手続にも対応していかなければなりません。
預金の使い込みに関してお困りの方がいらっしゃいましたら、弁護士にご相談ください。

預金の使い込みについてはこちらもご覧下さい

●預金の使い込みについて(被相続人の生前の使い込み)
●預金を使い込んだとして請求を受けた方へ(被相続人の生前の使い込み)
●使い込まれた預金の返還を請求したい方へ(被相続人の生前の使い込み)
●使い込まれた預金の返還請求のために必要な調査(被相続人の生前の使い込み)
●預金の使い込み問題における主な争点(被相続人の生前の使い込み)
●被相続人の死亡後の預金払戻について