はじめに

遺産分割をするに当たっては、分割の対象となる相続財産(遺産)の内容を調査することが必要です。
相続財産としては、現金、預貯金、不動産(土地・建物)、動産(自動車、貴金属、機械類、家具、ブランド品、美術品など)、株式や投資信託などのほか、貸金や売掛金などの債権も含まれます。
こうした相続財産の存在については、被相続人の遺品を整理する中で発見されることもあれば、被相続人宛ての郵便物を見て判明することもあります。
また、被相続人と同居していた相続人が相続財産の情報を持っていることも多いですし、被相続人と親しくしていた友人などが知っているケースもあり、被相続人に近しい人物からの情報収集は重要です。
さらに、こうした情報収集が困難な場合や、情報収集を踏まえた上での詳細の把握において有効となる主な相続財産の調査方法について、以下に整理いたしましたので、参考にしていただければと思います。

預貯金

預貯金については、被相続人名義のキャッシュカードや通帳から、どの金融機関にあるのかが分かることが多いでしょう。
金融機関からの郵便物で判明することもあります。
また、生活圏内にある主要な金融機関も考えられるところです。
預貯金の有無および残高は、これらの金融機関に名寄せ(残高証明書の交付)を申請することで調査が可能です(郵送での申請可)。
金融機関への名寄せの申請は、その金融機関の全支店を対象とすることが可能であり、相続人のうち1名が単独で行うことができます。
なお、被相続人がネット銀行を利用している場合もありますので、パソコンの中も確認してみることをお勧めします。

また、金融機関に取引履歴の取得を申請することで、少なくとも過去5年分の入出金の履歴の開示を受けることができますから、預貯金の使い込みや遺産の流出の有無を確認することも可能となります(郵送での申請可)。
取引履歴の取得についても、相続人のうち1名が単独で申請することが可能です。

不動産

不動産については、被相続人が保有する不動産の所在が、登記済証(権利証)や固定資産税関係の書類などから分かるのであれば、誰でも法務局で登記簿謄本を取得することができます(不動産所在地の法務局だけでなく、全国どこの法務局でも取得することが可能です)。
登記簿謄本を確認することで、その不動産が誰のものであるのか、抵当権などが設定されているかどうかなどを確認することができます。
また、その不動産の固定資産評価証明書の交付を不動産所在地の市区町村役場に申請することで、評価額を確認することができます(郵送での申請可)。

さらに、被相続人の住所地やその近郊など、被相続人が保有する不動産があると考えられる市区町村役場に申請をして、名寄帳の交付を受けることで、その市区町村に存在する所有不動産全てを一挙に確認することができます(郵送での申請可)。
ご説明が前後しましたが、遺産分割漏れの不動産を発生させないためには、まずは名寄帳の交付を受けた上で、登記簿謄本および固定資産評価証明書の交付を申請するという段取りで進めるのがよいでしょう。
なお、名寄帳や固定資産評価証明書の取得についても、相続人のうち1名が単独で申請することが可能です。

株式・投資信託

株式や投資信託については、被相続人が取引をしていた証券会社に照会することで、取引情報を開示してもらうことが可能です。
取引情報の開示請求は、相続人のうち1名が単独で行うことができます。
取引のあった証券会社は、証券会社からの郵便物で判明することもあるでしょう。
また、株主に対する配当通知などから、株式の存在が判明するケースもあるでしょう。

弁護士にご相談ください

以上のとおり、相続財産の調査においては、財産の種類ごとに、様々な手続きを取ることが必要となり、かなりの時間と手間がかかることも少なくありません。
当事務所では、相続財産の調査をサポートさせていただくことが可能ですので、是非一度ご相談ください。

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