相続人の中に被相続人の財産の形成・維持に特別の貢献をした人がいる場合、遺産の分配において、その相続人の取り分を多くするのが公平にかなうと言えます。
そこで、法律上、被相続人の財産の形成・維持に特別の貢献をした相続人の取り分を増やす制度があり、これを「寄与分」と言います。
このページでは、寄与分の成立要件と具体例をご説明させていただきます。

寄与分の成立要件

寄与分の成立要件は、次のとおりです。

①相続人の寄与であること。
②特別の寄与(被相続人と相続人との身分関係に基づき、通常期待されるような程度の貢献を超えるような寄与)であること。
③被相続人の財産が形成・維持されたこと。
④寄与行為と財産の形成・維持との因果関係があること。
⑤相続開始時(被相続人の死亡時)までの寄与であること。

上記5つの要件を満たす場合に、寄与分が成立します。

なお、相続人以外の被相続人の親族が特別の寄与をした場合には、相続人に対して特別寄与料を請求できる「特別の寄与の制度」があります。
詳しくは、以下の解説ページをご覧いただければと存じます。

●特別の寄与の制度について

寄与分の具体例

寄与分の具体例として、家業従事型、金銭等出資型、療養看護型、扶養型、財産管理型の5つの類型があります。

家業従事型

被相続人の家業に従事していた相続人に認められる類型です。
家業従事により、財産が形成・維持されたのであれば、寄与分の対象となります。
家業従事型の寄与分が認められるためには、労務の内容が相当の負担を要するものであること、労務の提供が一定以上の期間に及んでいることが前提です。
また、完全に無償である必要はありませんが、通常の給料水準と同等の給料の支払を受けている場合には、寄与分は認められません。

金銭等出資型

相続人が被相続人名義で不動産を購入した場合、自己所有の不動産に被相続人を無償で居住させた場合(この場合、被相続人は住居費の負担を免れ、財産の維持に繋がります)、被相続人の事業資金を援助した場合、被相続人の借金を肩代わりした場合、被相続人の医療費や施設入居費を負担した場合など、金銭等の財産的な貢献をした相続人に認められる類型です。
金銭等の財産的な貢献により、財産が形成・維持されたのであれば、寄与分の対象となります。
一方で、例えば、親の旅行の費用を子が負担したとしても、それが遺産の形成・維持に繋がるものではないため、寄与分は認められません。
また、少額の金銭援助や短期の不動産使用許諾の場合には、特別の寄与とは言えないため、寄与分は認められないでしょう。

療養看護型

被相続人の介護や病気の看護を行った相続人に認められる類型です。
相続人による療養看護の結果、療養看護費用の支出を抑え、財産が維持されたのであれば、寄与分の対象となります。
療養看護型の寄与分が認められるためには、被相続人が療養看護を必要とする健康状態であったことが前提であり、要介護認定の有無・程度などが参考となります。
また、療養看護の内容が相当の負担を要するものであること、療養看護が長期間継続していること、療養看護が無償あるいは無償に近い状態で行われていることが必要です。
なお、病院に入院・施設に入居していた時期は原則として療養看護型の寄与分は認められませんが(医師の指示等により付添看護をしたような場合には、療養看護型の寄与分が認められる可能性があります)、その際の被相続人の医療費や施設入居費を負担した場合には、金銭等出資型の寄与分が認められます。

扶養型

被相続人の生活費を援助していた相続人に認められる類型です。
相続人による扶養の結果、出費を免れることで財産が維持されたのであれば、寄与分の対象となります。
扶養型の寄与分が認められるためには、被相続人が身体的または経済的に扶養を要する状態であったことが前提となります。
また、扶養の内容が親族間における通常の範囲を超えるものであること、扶養が長期間継続していること、扶養が無償あるいは無償に近い状態で行われていることが必要です。
なお、複数の扶養義務者のうち特定の人だけが被相続人を扶養していた場合、被相続人の遺産分割における寄与分をして争われることもあれば、別途、扶養料の求償審判が申し立てられることもあります。

財産管理型

被相続人が所有する財産の管理を行った相続人に認められる類型です。
相続人による財産管理の結果、管理費用の支出を免れるなど、財産が形成・維持されたのであれば、寄与分の対象となります。
例えば、被相続人が所有する賃貸不動産の管理をした場合、被相続人が所有する不動産の売却にあたり売買契約の締結や占有者の立退き交渉をした場合などが考えられます。
財産管理の必要性があったことが前提であり、例えば不動産管理会社が賃貸不動産を管理している中で、相続人の1人が清掃や手入れなどをしたに過ぎないような場合には、寄与分は認められないでしょう。
また、財産管理の内容が相当の負担を伴うものであること、財産管理が長期間継続していること、財産管理が無償あるいは無償に近い状態で行われていることが必要です。

問題となりやすいもの

寄与分については、介護、家業従事などが問題となりやすいです。
この点、以下の解説ページをご覧いただければと存じます。

●介護と寄与分
●家業従事と寄与分

特別受益・寄与分についてはこちらもご覧ください

●特別受益と寄与分
●特別受益が問題になる場合と相続分の計算
●特別受益の成立要件と具体例
●寄与分が問題になる場合と相続分の計算
●寄与分の成立要件と具体例
●生命保険と特別受益
●死亡退職金と特別受益
●学費と特別受益
●介護と寄与分
●家業従事と寄与分
●持ち戻し免除の意思表示
●相続分不存在証明書について