1 遠方の相続人との遺産分割でよくあるトラブル
(1)そもそも連絡が取れない

遠方の相続人とは、普段から交流が無く、住所や連絡先が分からないということがあります。
また、遠方で被相続人と関わることなく生活してきた相続人の場合は、遺産分割に積極的に関与する意思がなく、連絡を取っても無視される可能性があります。
これらは、相続人がすでに亡くなっており、さらに下の世代が相続している場合や、前夫・前妻との子といった関係の相続人がいる場合などに問題になりやすいです。
(2)所在地が遠く、物件の状況(評価の妥当性)が分からない
遺産に不動産が含まれる場合、これを売却して代金を分けたり、不動産を取得する相続人がそれ以外の相続人に代償金を支払ったりする方法によって、不動産を金銭的に評価して遺産分割を行うことになります。
その際、不動産の評価方法としては、固定資産評価額を参照するなどの方法もありますが、物件の現況や需要を踏まえた市場価格を参照することがもっとも実態に近いと考えられます。
都市部などの需要の高い不動産であれば市場価格が固定資産評価額を上回る可能性があります。
逆に、固定資産評価額としては一定の価値がある不動産でも、建物が相当古く、かえって解体費用がかかる、所在地や利便性といった事情から価格を下げないと売却できないといった場合には、市場価格は相当程度低くなるということもあり得ます。
もっとも、所在地が遠い相続人にとってはその妥当性は容易には分かりませんので、不動産を不当に安く評価しているのではないかといった疑念が生じ、不動産の評価が争点になったり、手続きに協力しなかったりする可能性があります。
(3)遺産分割協議書の確認やサインに時間を要する
遺産分割を協議で進める場合、協議書の内容をあらかじめ確認してもらいながら、話し合いがまとまった後に遺産分割協議書にサインするといった進め方が想定されます。
もっとも、これを毎回郵送で行うとなると一定の時間を要します。
さらに、そのような協議の中で、相続人の中に遺産分割協議書を返送してこない人が一人でも出てくると、協議では手続きが進められなくなってしまうというリスクもあります。
2 遠方の相続人との不動産分割を放置してしまうリスク
(1)不動産登記の義務化
不動産登記法の改正により、令和6年4月から、不動産登記が義務化されています。
具体的には、相続により所有権を取得した者は、自己の相続の開始したこと及び所有権を取得したことを知った日から3年以内に所有権移転登記をしなければならないものとされており、これに違反した場合には10万円以下の過料に処されるものとされています。
(2)不動産価値の変動など
不動産の遺産分割を放置することによって、不動産を処分することができず、その間に不動産価値が下落していくといったリスクがあります。
建物については年数が経つほど価値がなくなっていきますし、土地についても価格変動についてのリスクを負うことになります。
(3)数次相続が起きてしまう
遺産分割を放置している間に、相続人が亡くなり、さらにその相続人への相続が発生することを数次相続と言います。
数次相続が生じると、単純に相続人の人数が増えて手続きが煩雑となるほか、親族関係が遠く、連絡先が分からなかったり協力的でなかったりする人物が出てくるというリスクも存在します。
3 遠方の相続人との不動産分割を進める流れ
(1)相続人の確定・所在調査
まずは被相続人の戸籍を取得し、遺産分割を行うことになる相続人の範囲を確定することになります。
その際、連絡先が分からない相続人がいる場合には、戸籍の附票による住所の調査などを検討します。
(2)相続財産の確定
並行して、対象となる相続財産を確定していきます。
不動産については、被相続人の固定資産課税台帳を取得することで、被相続人が当該市町村に所有する不動産の一覧を確認することができます。
(3)遺産分割協議
相続人との間で、具体的にどのように遺産分割を行うかを協議します。
内容がまとまったら、当該内容の記載のある遺産分割協議書を作成する形になります。
なお、遺産分割協議書は相続人全員の署名があるものを作成することもありますが、遠方の相続人の場合は、各自が遺産分割の内容に同意した旨の証明を行う書面である遺産分割協議証明書に記入し、これを集約するという方法も活用されます。
(4)遺産分割調停
協議でまとまらない場合、調停を申し立てることになります。
調停とは、裁判所を介した話し合いの手続きであり、相手方となる方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てをして行います。
自分以外の相続人が複数人いる場合は、その中の誰かの住所を管轄する家庭裁判所に申し立てることになります。
なお、遠方の家庭裁判所に申し立てることになった場合でも、郵送で申立てを行い、ウェブ会議等を利用するといった方法で調停を行うことができます。
(5)遺産分割審判
調停でも遺産分割がまとまらない場合、裁判官による判断を求めるための遺産分割審判という手続きに移行することになります。
なお、遺産分割審判については被相続人の住所地を管轄する裁判所にて行います。
(6)登記手続
不動産に関しては、遺産分割協議・調停・審判で決まった内容で実際に登記を行って手続きが終了となります。
登記申請は、土地の所在地を管轄する法務局に対して行うことになりますが、郵送やオンラインの方法によって申請を行うことが可能です。
4 遠方の相続人との不動産分割を弁護士に依頼するメリット
遠方の相続人がいる場合、そもそも相続人の居場所が分からなかったり、連絡に応答してくれなかったりして、遺産分割が進めにくい可能性があります。
さらに、遺産に不動産が含まれる場合、不動産の評価が争われて協議に応じてもらえないといったリスクもあるほか、登記手続を行うことを踏まえて適切に手続を進めていく必要があります。
弁護士に依頼することで、戸籍等により相続人の居場所を調査しつつ、状況に応じて協議・調停といった手続を適切に選択して、遠方の相続人相手でも着実に遺産分割を進めることが期待できます。
さらに、適正に不動産の評価額の争いを解消しつつ、登記手続までスムーズに進めることが期待できます。
5 不動産の遺産分割は当事務所にご相談ください
不動産の遺産分割については、評価方法や登記手続が問題になり得ますので、専門家のサポートのもと進めることをお勧めいたします。
特に、遠方の相続人がいる場合であれば、遺産分割の進め方という点でも悩まれることが多いと思われます。
当事務所では、遠方に相続人がいるなどの様々なケースにおいて、不動産の遺産分割を取り扱ってきた実績がございます。
不動産の遺産分割についてお悩みでしたら、当事務所にご相談いただければと存じます。
(弁護士・神琢磨)









