はじめに

遺産相続をめぐる争いの一つに、「遺言書が偽造されたものである」とか、「遺言書が作成された当時、被相続人が認知症を患っていて遺言をするための判断能力(遺言能力)がなかった」などの遺言の効力に関する争いがあります。
このような争いでは、遺言の内容が自分にとって有利な者は遺言の有効を主張し、自分にとって不利な者は無効を主張して、なかなか話し合いによって解決することはできません。
そして、遺言の効力に関する争いが続く限り、遺産をどのように分配するかを確定することができません。
そこで、遺言が有効か無効かを確定する手続として、調停や訴訟(裁判)の手続が用意されています。
以下では、遺言の効力に関する調停・訴訟について、ご説明させていただきます。

遺言無効のご相談

遺言無効確認請求の調停・訴訟

遺言の効力に関する法的手続として、遺言無効確認請求の調停・訴訟があります。
家事事件手続法では、原則として、訴訟を提起する場合には、先行して調停を申し立てる必要があると定めています。
そして、調停において遺言の効力に関する争いが解決できなかった場合には、遺言無効確認請求訴訟を提起するというのが、原則的な流れになります。
しかし、現実的には、遺言の効力について調停で話し合ったところで、折り合いが付けられないことが多いでしょう。
そこで、遺言無効確認請求訴訟については、調停を申し立てずに最初から訴訟を提起することが実務上一般的に行われています。

遺言無効確認請求訴訟も通常の訴訟と同じですから、遺言の無効を主張する者が、無効であること等の事実関係(無効原因)の主張と、その主張を裏付ける証拠を提出して証明しなければなりません。
例えば、遺言書の偽造を主張するならば、なぜ偽造と言えるのかを、証拠を提出して証明しなければなりません。
また、遺言能力がなかったことを主張するならば、遺言書作成当時の遺言者の医療記録などの証拠を提出して証明しなければなりません。

弁護士にご相談ください

遺言無効確認請求の調停・訴訟の結果、遺言が無効ということになれば、その遺言は法的には存在しなかったことと同じになりますから、通常の遺産分割を行うことになります。
そのため、遺言が無効であることを確定するだけでなく、その後の遺産分割等の問題も合わせて解決する必要があります。

遺言の効力に関する争いを解決するための手続は、法律の専門家でない方にとっては、非常に複雑なものであり、弁護士のサポートなしでは対応が困難です。
また、弁護士であれば、遺言の効力に関する争いの訴訟まですべての手続の代理が可能であり、その後の遺産分割等の手続も合わせてサポートすることができます。
遺言の効力に関する争いの結果は、相続人等の財産取得に重大な影響を及ぼすことになります。
遺産の効力に関する争いでお困りの方がいらっしゃいましたら、まずは相続問題に詳しい弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。

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