相続税の申告期限について

相続税の申告期限は、被相続人が死亡してから10か月です。
10か月の期限を過ぎてしまうと、配偶者の税額軽減(相続税法19条の2)や小規模宅地等についての課税価格の特例(租税特別措置法69条の4)といった相続税を大幅に軽減できる規定の適用を受けられなくなってしまいます。

また、相続税の申告が遅れると、税務署が独自に被相続人の遺産を調査して、その結果をもとに税務調査に入り、相続税を課する決定処分をしてくることがあります。
こうなると、無申告加算税や延滞税といった余計な税金も納めなければいけなくなってしまいます。

そこで、遺産分割が相続税の申告期限に間に合うように進めていくべきことは当然なのですが、何らかの原因で間に合いそうにないときには、しかるべき対策を講じていかなければなりません。

間に合わなくなる主なケースと対策

(1)相続調査の遅れ

遺産分割や相続税の申告に当たっては、相続人調査、遺産調査、不動産の評価など、やらなければならないことが多く、10か月の期限は意外と短いものです。
こうした相続調査への着手が遅れてしまったり、10か月もあると油断してゆっくりと進めてしまったりすると、期限に間に合わなくなりがちです。

このような場合には、何とか期限に間に合うように申告を急ぐことになりますが、遺産分割協議がすでに完了していたり、相続人の数が少なかったりすれば、間に合わせることができるケースもありますので、諦めないようにしましょう。
また、不動産の調査や評価が間に合わない場合には、とりあえず小規模宅地等についての課税価格の特例(租税特別措置法69条の4)を適用しない状態で多めの申告・納税をし、後で再計算をして更正の請求をして、多く納税した分を還付してもらうといった方法もあります。

(2)遺産分割で揉めている

遺産分割で揉めていても、相続税の申告期限までに余裕がある場合は、相続問題に精通した弁護士にご相談いただき、早期の解決を目指すのが良いでしょう。

しかし、遺産分割の話し合いがなかなかまとまらず、どうしても相続税の申告期限までに完了させられないこともあるでしょう。
また、協議がまとまらず、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる場合には、10か月の期限に間に合わない可能性が高いです。
このような場合は、便宜上、各相続人が法定相続分のとおりに遺産を取得したものと仮定して、いったん期限までに相続税を納めてしまうことが考えられます。

その後、遺産分割を完了させて、実際に取得した遺産の額に基づいて、相続税の更正の請求をするのです。
ただし、このように遺産分割が完了しない段階で相続税の申告をすると、配偶者の税額軽減(相続税法19条の2)や小規模宅地等についての課税価格の特例(租税特別措置法69条の4)といった相続税を軽減できる制度の適用を受けることができませんので、注意が必要です。

(3)その他の原因

その他、①災害その他のやむを得ない理由があるとき、②認知や相続人の廃除などで相続人に異動が生じたとき、③遺留分侵害額請求があったとき、④遺贈について書かれた遺言書が発見されたとき、⑤相続人となる胎児がいるときなど、法律で定められた一定の特殊な状況に該当する場合には、相続税の申告期限に間に合わない可能性があるものとして、申告期限を2か月の範囲内で延長してもらうことが可能です。

しかし、法律で定められているもの以外の理由では、申告期限の延長は認められません。
遺産分割が完了していないという理由では、申告期限の延長は認められませんので、ご注意ください。

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