相続放棄をする場合、被相続人の現金・預金を費消すれば、法定単純承認事由に当たるものとして、相続放棄の効力が否定される可能性がありますので、十分に注意しなければなりません。
一方で、相続放棄をする相続人が、被相続人の葬儀費用を被相続人の現金・預金から支払うという例も散見されるところであり、このような場合にも法定単純承認事由に該当してしまうのか?という問題があります。
この点、被相続人の現金・預金から葬儀費用を支払ったとしても、一般的に許容される範囲の葬儀費用にとどまる限り、遺産の処分による単純承認には該当しないものと考えられます(大阪高裁昭和54年3月22日決定)。
ただし、どこまでが許容される範囲なのか?という問題があります。
また、「葬儀費用が許されるなら、この支出も許されるだろう」という考えで動けばリスクもありますので、被相続人の現金・預金から葬儀費用を支払うことはあまりお勧めしません。
基本的には、相続放棄をするのであれば、被相続人の現金・預金には手を付けないことをお勧めいたします。
思わぬミスを犯さないようにするためには、相続人(喪主)自身のお金で葬儀費用を支払うことをお勧めしております。