相続放棄をしたとしても、放棄時に現に占有(占有というのは、その不動産に居住するなどして支配・管理していることを言います)している不動産については放棄後も管理の責任を負いますので、放置することには問題があります。
一方で、遠方に居住しているなど相続放棄時に不動産を占有していない相続人は、放棄後に管理の責任を負うことはありません。
相続人全員が相続放棄をしても、相続人であった者は、放棄時に現に占有している相続財産について、相続財産清算人が選任されるまで、「自己の財産におけるのと同一の注意」をもって相続財産を管理しなければいけません。
そのため、相続放棄時に居住するなどして支配・管理している不動産を放置して、近隣に迷惑や被害を及ぼすような事態が生じた場合には、相続放棄をした者は、管理責任を問われて損害賠償の請求を受けることともなりかねません。
したがって、相続放棄をしたとしても、放棄時に現に占有している不動産について修繕・維持などの管理をせずに放置することには問題があります。
一方で、相続放棄後に相続財産の管理の責任を負うのは、放棄時に現に相続財産を占有している場合に限られます。
したがって、遠方に居住しているなど相続放棄時に不動産の管理に関わっていなかった相続人については、放棄後に管理の責任を負うことにはなりません。
相続人全員が相続放棄をした場合、相続放棄をした者や利害関係人は、家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てることができます。
相続財産清算人が選任されれば、その相続財産清算人が不動産の管理を引き継ぎますので、相続放棄した者は、相続放棄時に現に占有している不動産の管理から解放されることになります。
もっとも、相続財産清算人の選任を申し立てる際、申立人は費用の予納を求められることが通常です。
金銭的な負担があることから申立てをするかどうか迷うところですが、管理に困る不動産があるような場合は、費用がかかっても相続財産清算人の選任申立てを検討することになるでしょう。