相続人は、通常、被相続人が亡くなった場合に遺産を相続することができます。
もっとも、民法には、子や配偶者などであっても、一定の場合には相続人になることができない制度として、相続欠格と相続人の廃除というものが設けられています。

相続欠格とは

相続欠格とは、次の事由に該当する相続人の相続権が自動的になくなるという制度です。
●被相続人または自分より先の順位もしくは同順位の相続人を、殺害または殺害未遂をして刑に処せられた者
●被相続人が殺害されたことを知りながら、犯人を告訴・告発しない者(ただし、その者が是非の分別がない場合や、犯人が自分の配偶者、父母、子などの直系血族の場合は除く)
●詐欺または強迫を用いて、相続に関する被相続人の遺言の作成・撤回・取消し・変更を妨げた者
●詐欺または強迫を用いて、被相続人に、相続に関する遺言の作成・撤回・取消し・変更をさせた者
●相続に関する被相続人の遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した者

また、受遺者(遺贈によって遺産を譲り受ける者)が相続欠格に該当する行為を行った場合も、相続権がなくなります。
相続欠格に該当する者は、相続権を取得することができないため、相続欠格者との間で行った遺産分割は無効となります。
なお、相続欠格に該当する場合には、相続欠格者の子が代襲相続をすることができます。

相続人の廃除とは

相続人の廃除とは、遺留分を有する推定相続人(現状のままで相続が開始した場合に相続人となるべき者)に、次の事由がある場合に、その者の相続権をなくするために、家庭裁判所に申立てをする手続きです。
●被相続人に対して虐待をした場合
●被相続人に重大な侮辱を与えた場合
●推定相続人にその他の著しい非行がある場合

家庭裁判所は、これらの事由があり、被相続人と推定相続人との間の信頼関係が破壊されたと判断した場合に、その推定相続人の廃除の判断をします。
相続人の廃除の手続きを行うためには、被相続人が生前に家庭裁判所に申し立てる方法と、遺言執行者が被相続人の死後に廃除する旨が書かれた遺言書をもって家庭裁判所に申し立てる方法があります。

また、廃除された相続人との間で行われた遺産分割は無効であること、廃除された者の子が代襲相続できることについては、相続欠格の場合と同様です。
一方で、相続欠格の場合と異なる点としては、廃除された者は遺贈を受けることができること、被相続人が廃除の取り消しをすることができることが挙げられます。

相続の基礎知識についてはこちらもご覧ください

●相続の基礎知識
●相続のスケジュール
●法定相続人と法定相続分とは
●相続欠格と相続人廃除
●相続放棄と限定承認