はじめに

相続人が多数いるために遺産分割が進まず、お困りの方はいらっしゃいませんか?
相続人が多数いる場合であっても、遺産分割は相続人全員でしなければなりません。
このページでは、相続人が多数いる場合の遺産分割の注意点や手続の進め方について、ご説明させていただきます。

遺産分割協議の流れ

遺産分割は、まずは協議(相続人同士の話し合い)による解決を試みるのが基本です。
遺産分割協議の流れは、おおむね次のとおりです。

1 相続人の調査

戸籍謄本類・戸籍の附票を収集し、相続人全員を特定し、その住所を調査します。

2 相続人に対する連絡

相続人全員に対し、遺産分割を行う旨の連絡をします。

3 遺産分割の話し合い

相続人全員で遺産分割の話し合いをします。
最終的に遺産の分割方法に合意できればよいため、相続人全員が一堂に会する必要はなく、電話や手紙で話し合いを進めても問題はありません。

4 遺産分割協議書の作成

遺産分割の話し合いがまとまれば、遺産の分割方法を記載した遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書には、相続人全員が署名し、実印による押印をするとともに、印鑑登録証明書を添付する必要があります。
遺産分割協議書は、後述する遺産分割協議証明書で代用することもできます。

5 遺産の分配

遺産分割協議書に従って、預金の解約、不動産の名義変更、その他遺産の分配のための手続を行います。

相続人が多数いる場合の遺産分割の注意点

相続人が多数にのぼるケースとしては、①兄弟姉妹や甥・姪が相続人になる場合、②二次相続や三次相続が発生している場合などがあります。

①兄弟姉妹や甥・姪が相続人になる場合

被相続人に子どもがおらず、親がすでに亡くなっている場合には、兄弟姉妹に相続権があります。
そして、兄弟姉妹が亡くなっていれば、その甥・姪が代襲相続します。
兄弟姉妹や甥・姪が相続人になる場合には、相続人が多数にのぼることが少なくありません。

②二次相続や三次相続が発生している場合

また、先代の相続の際に遺産分割協議が行われておらず、遺産の名義が先代のままとなっている場合には、先代の相続(一次相続)と今回の相続(二次相続)の両方について遺産分割を行う必要があります。
一次相続の相続人が亡くなっていれば、その相続人が権利を引き継ぎます。
そのため、遺産分割に関与する相続人が多数にのぼることがあるのです。

遺産分割の注意点

このように相続人が多数いる場合であっても、遺産分割協議は相続人全員で行わなければなりません。
せっかく遺産分割協議書を取り交わしても、1人でも抜けている相続人がいれば遺産分割は無効となってしまいます。
相続人が多数いる場合には、相続人の特定、住所の調査、全員の意見の集約に多大な手間や困難を伴うことが想定されます。
そのため、遺産分割をなかなか進められずに苦慮される方が数多くいらっしゃいます。
また、大勢いる相続人の中に行方不明や音信不通の相続人、認知症の相続人、未成年者の相続人がいる場合には、遺産分割の前に別途法的な手続が必要となるため、より複雑な事案となります。

●行方不明や音信不通の相続人がいる場合の遺産分割
●認知症の相続人がいる場合の遺産分割
●相続人に未成年者がいる場合の遺産分割

当事務所では、相続人が多数いる場合の遺産分割に関するご相談をお受けしておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。

相続人が多数いる場合の遺産分割協議の進め方

相続人が多数いる場合、遺産分割協議の手続は非常に煩雑なものとなりますが、以下のようなポイントを押さえることで比較的スムーズに進めることができます。

手紙を郵送して遺産分割への協力を求める

まずは各相続人に対し、手紙で状況説明をして遺産分割への協力を求めるのがよいでしょう。
相続人が多数いる場合には、一人一人と電話で話し合いをすることは労力がかかり、電話が繋がらないことも考えられます。
また、疎遠な相続人にいきなり電話をかけても、警戒されてしまうかもしれません。
そもそも、電話番号が分からない相続人がいる場合も少なくないでしょう。
そこで、現実的な進め方としては、まずは手紙で状況を整理して伝え、遺産分割への協力を求めていくのがよいと考えられます。

遺産分割協議証明書の取り付け

遺産分割の話し合いがまとまれば、取り決めた内容を書面で取り交わす必要があります。
遺産分割では、相続人全員が1通の書面に署名・押印する形の遺産分割協議書を取り交わすのが通常ですが、相続人が多数いる場合には、遺産分割協議書の取り交わしには膨大な時間と手間がかかってしまうことが多いです。
郵送で遺産分割協議書のやり取りをすると、相続人の1人に送って署名・押印のうえ返送してもらい、また次の相続人に送るという手順を繰り返すことになるためです。

そこで、相続人が多数いる場合には、「遺産分割協議証明書」を活用することが推奨されます。
遺産分割協議証明書とは、遺産分割協議で取り決めた内容に間違いがないことを、各相続人が証明する書面のことを言います。
遺産分割協議証明書は、同じ内容の書面を人数分作成し、各相続人が署名・押印する形のものです。
同じ内容の遺産分割協議証明書を各相続人に一斉に郵送し、署名・押印して印鑑登録証明書と一緒に返送してもらうことで取り付けます。
遺産分割協議証明書は、取り付けに時間と手間を省くことができますし、相続人全員の分が揃えば、遺産分割協議書と同じ効力があります。

【遺産分割協議証明書の記載例】

相続分譲渡証明書の取り付け

遺産分割協議が成立する前であれば、相続人が持っている相続分を、他の相続人へ譲渡することができます。
相続人から相続分の譲渡を受け、「相続分譲渡証明書」を書いてもらうことにより、その相続人を遺産分割から除外することができます。
相続分の譲渡は、無償でも有償でも行うことができます。
遺産分割協議を円滑に成立させるために、相続分の譲渡を受けるに当たり、一定の対価の支払を検討すべきケースもあります。

【相続分譲渡証明書の記載例】

遺産分割協議が成立しない場合の手続

遺産分割の話し合いを試みた場合でも、合意の取り付けができない相続人が1人でもいれば、遺産分割協議を成立させることができません。
しかし、遺産分割協議が成立しないからといって、手続を放置してはいけません。
放置している間にさらなる相続が発生し、相続人の数がさらに増えることにより複雑化し、ますます手続が困難になってしまいます。
また、2024年(令和6年)4月から不動産の相続登記が義務化され、相続の開始から3年以内に相続登記をしなければ、罰則(過料)の適用を受ける可能性があります。

そこで、遺産分割協議が成立しない場合の手続として、家庭裁判所に遺産分割調停の申立てをし、解決を図る必要があります。
実際には、各相続人に対して手紙を郵送して遺産分割への協力を求めた際に、協力を拒否する相続人が何人かいるような場合には、早々に遺産分割調停の申立てに切り替えた方が、解決が早まるというケースも多いでしょう。
相続人全員による任意の合意が困難であると見込まれるケースでは、最初から(遺産分割協議を試みずに)遺産分割調停を申し立てることもあります。
このように、相続人が多数いる場合には、遺産分割調停の申立てが、解決のための有力な選択肢となることが少なくありません。

弁護士にご相談ください

相続人が多数いる場合の遺産分割は、相続人の調査のための戸籍謄本類・戸籍の附票の収集、大勢の相続人との連絡・話し合い、遺産分割協議証明書の取り付け、遺産分割協議が成立しない場合の遺産分割調停の申立てなど、手続が非常に複雑です。
法律の専門家である弁護士に手続をご依頼いただくことにより、手続にかかる手間を大幅に軽減し、スムーズに解決を図ることが可能となります。
当事務所では、これまでに、相続人が多数いる場合の遺産分割のご相談・ご依頼を多数お受けし、解決に導いてきた実績がございます。
相続人が多数いるために遺産分割が進まず、お困りの方がいらっしゃいましたら、お気軽に当事務所にご相談いただければと存じます。