漁師の相続の法的問題点

青森県は日本海・津軽海峡・太平洋に面し、中央には陸奥湾があります。
青森県内の各地で漁業が盛んに行われています。
漁師の方が亡くなったときには、サラリーマンなどの職業の方とは異なり、いくつかの特殊な財産が残されることになります。
一般的に想定される相続財産としては、預貯金や不動産、株式といったものでしょう。
もっとも、漁師の相続においては、漁業に関係する財産が相続されることとなり、特別な注意が必要となります。
本コラムでは、漁師の方が亡くなったときに生じる法的問題点について、解説していきます。

漁業権の相続について

漁業権とは、「一定の水面において特定の漁業を一定の期間排他的に営む権利」のことをいい、「定置漁業権」、「区画漁業権」、「共同漁業権」の3つに分かれます。
漁業権は財産権の一種ですので、相続財産に含まれ、相続人に相続されることは当然のことです。
ただし、漁業は他の財産権と違って公益的な性質を持っていることから、その相続には特別な手続きが定められています。

以下、青森県において必要な漁業権の相続手続きについて解説していきます。
青森県の場合は、県漁業調整規則第17条2項により、相続が発生してから2か月以内に青森県に適宜の様式によって相続の事実を届け出ることになります。
その際、戸籍謄本等の相続の事実が分かる書類を一緒に提出することとなります。
その後、青森県において相続人が漁業権を相続することの適格性を審査され、審査の過程で青森県海区漁業調整委員会に諮問されます。
適格性がないと判断された場合には、一定期間内に漁業権を譲渡する必要があり、譲渡されないとその漁業権は取り消しの対象となってしまいます。

このように、漁業権の相続においては、青森県の場合、相続人であることが直ちに漁業権の承継につながるものではないので、注意が必要です。

漁船の登録事項変更について

漁師の方は漁船を所有していることも多いでしょう。
漁船の所有者については、漁船を管轄する都道府県の登録原簿を見て確認できます。
青森県の場合、登録原簿の謄本の交付申請をして所有者の確認ができます(青森県水産情報・漁船の登録)。

漁船の所有者について相続が発生する場合、登録原簿に登録されている内容を変更する必要があります。
変更のための必要書類は、相続権利同意書、同意者の印鑑証明書、被相続人の戸籍謄本、漁船登録票の写し、所属漁協の副申書となります(青森県水産情報・漁船の登録)。

水産加工工場・営業所・店舗の相続について

亡くなった漁師の方が水産加工工場・営業所・店舗を経営していた場合、その経営主体は株式会社等の法人となっていることがあります。
株式会社の場合には株式という財産が存在し、この株式も相続財産に含まれるので、相続人同士で株式に関する遺産分割協議を行い、帰属先を確定させることが必要となります。
その上で、会社の株主名簿における名簿書換えが必要となってきます。

これは会社法の分野の説明となるので、漁師の相続について解説する本コラムでの詳しい解説は省略しますが、特に注意すべき点としては、亡くなった漁師の方が会社の取締役となっていたときには、死亡した旨の登記を2週間以内にする必要があることです(会社法915条1項)。
そして、この登記を怠ったときは過料の対象なります(会社法976条)。

また、水産加工工場・営業所・店舗を経営している主体が亡くなった漁師の方個人である場合には、これらの事業に関する営業権が相続財産に含まれることになります。
営業権とは、顧客名簿、販売ノウハウというように、長期に及ぶ経済活動によって蓄積された無形の経済的利益を生む集合体のことをいいます。
このような営業権を相続する相続人を遺産分割協議で決めることとなります。

水産加工工場・営業所・店舗といった不動産を所有している個人が亡くなったときには、その所有権の帰属先を協議で決めることになります。

弁護士にご確認ください

以上のように、漁師の相続には特有の法的問題点があります。
法律の専門家である弁護士にまずはご相談いただくことをお勧めいたします。