遺言書は、法律で定められた方式に従って作成したものでなければ、法的な効力を持ちません。
法律で定められた遺言書の方式としては、主に、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つがあります。

自筆証書遺言とは、遺言者が遺言書の全文を自分で書く方式のものです。
代筆やワープロ・パソコンの使用は認められず、すべて本人が自筆しなければなりません。
そして、作成した年月日を自筆して、署名・押印をします。年月日については、元号・西暦や漢数字・算用数字を問いませんが、例えば「平成8年8月8日」のように日付を特定する必要があり、「平成8年8月吉日」という書き方では無効となります。
また、訂正箇所には、訂正印を押します。
押印は、実印でなくても構いません。
なお、自筆証書遺言に財産目録を添付する場合には、財産目録については自筆でなくても構いません(ただし、自筆によらない財産目録については、財産目録の各頁に署名・押印する必要があります)。

公正証書遺言とは、公証役場で公証人に作成してもらう方式の遺言書のことを言います。
遺言者が2人(以上)の証人とともに公証役場へ行き、公証人および証人の前で遺言の内容を口頭で述べたうえ、公証人がその内容に従って公正証書という公的な文書の形で遺言書を作成します。
そして、遺言者・証人・公証人がそれぞれ署名・押印して、完成となります。
この押印には、実印と印鑑登録証明書が必要となります。
実際の作成手順としては、いきなり公証役場に出向いてすぐに作成してもらうのではなく、事前に遺言書の内容を公証人と相談し、必要書類や注意事項を確認のうえ、作成の手続に臨むのが通常です。
遺言者が病気等で公証役場に行けない場合は、公証人に自宅や病院等へ出張してもらうことも可能です。

秘密証書遺言とは、「内容」を秘密にしつつ、公証役場で公証人に「存在」を証明してもらう方式の遺言書のことを言います。
作成手順としては、遺言者が自分で作成した遺言書を持って、2人(以上)の証人とともに公証役場へ行き、公証人および証人の前で遺言書が入った封書を提出します。
なお、この遺言書は、本人が署名・押印さえすれば、代筆やワープロ・パソコンを使用して作成したものでも構いません。
そして、公証人が封書上に所定の事項を記入し、遺言者・証人・公証人がそれぞれ署名・押印して完成となります。
この押印には、実印と印鑑登録証明書が必要となります。

なお、遺言書の方式としては、上記の3つ以外にも、病気・怪我や船舶遭難で死期が差し迫っている場合や、伝染病隔離・船舶中といった一般社会から隔絶された状況で死期が差し迫っている場合に利用できる、特殊な方式のものも法律で定められていますが、一般的に活用される方式ではないため、ここでの説明は省略させていただきます。