相続人は、被相続人の預金を使い込んだ人に対し、法定相続分に応じて返還を求めることができます。
例えば、相続人が被相続人の子3人であり、相続人の1人が被相続人の預金3000万円を使い込んでいた場合、他の相続人2人は、使い込みをした相続人に対し、それぞれ、1000万円(使い込み額3000万円×法定相続分3分の1)の返還を求めることができます(2人合わせて2000万円)。
また、訴訟(裁判)を提起して使い込んだ預金の返還を求める場合には、弁護士費用の一部(請求額の10%相当額)および返還までの遅延損害金を合わせて請求するのが通常です。

相続に関連する紛争の一つとして、被相続人の生前、相続人の1人(あるいはそれ以外の第三者)が被相続人の預金を無断で払い戻して、自分のものにしていた(ことが疑われる)というものがあります。
被相続人の預金は、被相続人の財産であり、当然ながら、誰かが無断で払い戻して使い込むことは許されません。
そのため、被相続人の死亡後に預金の使い込みが判明した場合には、相続人は、被相続人の預金を使い込んだ人に対し、法定相続人に応じて返還を求めることができるのです。

使い込んだ預金の返還を求める法的根拠としては、不当利得(民法703条)および不法行為(民法709条)の2つがあります。
不当利得とは、正当な理由なく利益を受け、それによって他人に損失を与えた場合には、受け取った利益を返還しなければならないという制度です。
不法行為とは、故意または過失によって他人に損害を与えた場合には、その損害を賠償しなければならないという制度です。
不当利得および不法行為のいずれも、返還までの期間について遅延損害金が発生するものとされ、不法行為については、弁護士費用の一部(請求額の10%相当額)を訴訟(裁判)上請求することができます。