1 背景

被相続人である父が40年以上前に亡くなり、その配偶者である母も10年以上前に亡くなっており、相続人は3名の子(依頼者)でした。
依頼者は、被相続人である父母からは財産が何もないと聞かされており、父母が亡くなった際に相続手続を一切とっていませんでした。
ところが、最近になって突然、法務局から「長期間相続登記等がされていないことの通知(お知らせ)」という書面が届きました。
その書面には、父の先代である祖父名義の土地が存在し、相続登記がなされていないため、必要な登記申請を行うように、との内容が記載されていました。
依頼者にとっては寝耳に水の話であり、そのような土地があることは全く知りませんでした。
そして、原野状態となっている祖父名義の土地を引き継いでも使い道がなく、固定資産税や管理責任の負担がかかるだけであることから、できれば相続放棄をしたいとのことで、当事務所にご相談に来られました。

2 当事務所の活動と結果

当事務所の弁護士は、依頼者からのご相談を受け、被相続人である父母から財産が何もないと聞かされていた状況であれば、父母が亡くなったことを知ってからとうの昔に3か月が経過しているものの、相続放棄が認められる可能性は十分にある、と判断しました。
そして、相続放棄の手続をご依頼いただくこととなりました。
当事務所の弁護士は、ご依頼いただいたあと速やかに、戸籍謄本類を収集し、相続放棄申述書を作成しました。
また、①被相続人である父母から財産が何もないと聞かされており、父母が亡くなった際に相続手続を一切とっていなかったこと、②法務局から「長期間相続登記等がされていないことの通知(お知らせ)」という書面が届いたことで、初めて遺産が存在することを知ったこと、③原野と化した土地を引き継いでも固定資産税や管理責任の負担がかかるだけであり、相続放棄をする必要があること、などを記載した上申書を作成し、相続放棄申述書・戸籍謄本類・その他必要な添付書類とともに家庭裁判所に提出しました。
その結果、3か月経過後ながら相続放棄の申述が受理され、依頼者は祖父名義の土地を引き継がずに済むこととなりました。

3 所感

民法および不動産登記法が改正され、令和5年度(2023年度)から相続登記が義務化されました。
具体的には、相続により不動産の所有権を取得した者は、相続の開始(被相続人の死亡)を知り、かつ、所有権を取得したことを知った日から3年以内に、不動産の名義変更登記をしなくてはならないものとされました。
この申請を怠ると10万円以下の過料の対象になります。

ところで、法務局としても「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」に基づく調査をし、長期間にわたり相続登記等がなされていない土地について、相続人に対して必要な登記申請を行うように通知する、という対応をとるようになっています。
所有者が亡くなっているにもかかわらず、相続登記等がなされずに30年以上放置された土地が対象です。
このように、法務局から「長期間相続登記等がされていないことの通知(お知らせ)」という書面が届くことで、初めて遺産として土地が存在することを知るというケースも珍しくありません。
このようなケースで、土地の取得を希望しないとなれば、被相続人が亡くなったことを知ってからかなりの年数を経過しているのが通常であるため、3か月経過後の相続放棄の可否が問題となります。
3か月経過後の相続放棄が認められるかどうかはケースバイケースであり、十分に検討して丁寧に手続を進めていく必要があります。
まずは法律の専門家である弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。
当事務所では、3か月経過後の相続放棄の問題を解決した実績が多数あり、相続放棄についてお悩みの方はお気軽に当事務所にご相談いただければと存じます。

4 お客様の声

大変お世話になりました。
今後共よろしくお願い致します。

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