1 背景

50代の男性(お客様)から、7年前に亡くなった父(被相続人)の相続放棄について、ご相談いただきました。
お客様は、被相続人の生前、被相続人とは1年に1回程度顔を合わせるくらいの疎遠な関係が長らく続いていました。
被相続人が亡くなると、お客様は葬儀などには関与したものの、被相続人には何も財産や債務がないものと認識し、遺産分割や相続放棄の手続を取らずにいました。

被相続人の死亡から7年後に、お客様のもとに、突然、裁判所から担保不動産競売開始決定の通知が送付されてきました。
その内容は、お客様の妹夫婦の家の住宅ローンが滞納状態となっており、被相続人がその住宅ローンの連帯債務者の1人となっていることから、相続人であるお客様が連帯債務の一部を相続したとするものでした。
お客様は、被相続人からも、妹夫婦からも、被相続人の債務のことを一切聞かされておらず、寝耳に水の状況でした。
お客様は、被相続人の死亡から3か月以上が経過しているものの、相続放棄によって被相続人の債務の相続を免れることはできないかとのことで、当事務所にご相談に来られました。

2 当事務所の活動と結果

ご相談をお受けした当事務所の弁護士は、お客様と被相続人との交流状況などから、お客様が3か月以内に相続放棄の手続を取らなかったことには、正当な理由があるものと考えました。
そして、相続放棄の申述が受理される可能性が十分にあることをご説明させていただいたところ、当事務所に相続放棄の手続への対応をご依頼いただくこととなりました。

当事務所の弁護士は、速やかに、お客様と被相続人との交流状況、お客様が被相続人および妹夫婦から被相続人の財産・負債の状況に関する説明を一切受けていなかったこと、お客様が担保不動産競売開始決定の通知によって初めて被相続人の債務の存在を知ったこと、お客様が被相続人の遺産を一切取得していないこと、これらを踏まえるとお客様が3か月以内に相続放棄の手続を取らなかったことには正当な理由あることなどを記載した報告書を作成しました。
その上で、当事務所の弁護士は、相続放棄申述書を作成し、上記の報告書およびその他の必要書類を添付して、家庭裁判所に提出しました。

その後、家庭裁判所からお客様のもとに、相続放棄の申述の内容が真実であるかどうかの照会書が送付されました。
すぐに、当事務所の弁護士のサポートのもとに回答書を作成し、お客様にて家庭裁判所へ返送していただきました。
すると、数日後には、家庭裁判所から当事務所宛てに相続放棄申述受理通知書が送付されてきました。
こうして、3か月経過後の相続放棄に関する正当な理由について、家庭裁判所に正確に説明して理解を得ることに成功したことで、スムーズに相続放棄の受理を獲得することができました。

3 所感

相続放棄の手続は、被相続人の死亡を知った時から3か月以内に行わなければならないのが原則です。
しかし、生前の被相続人との交流が少なく、財産・債務の状況を把握してないために、相続放棄の必要性を認識しないままに3か月が経過することは珍しくありません。
そして、3か月経過後に被相続人の債権者や裁判所からの通知によって、初めて被相続人の債務の存在を知る事案は、非常に多く発生しています。
このような場合には、3か月以内に相続放棄の手続を取らなかったのは、無理からぬことである(正当な理由がある)と判断され、相続放棄の申述が受理される事例が多々あります。
3か月経過しているからといって相続放棄を諦めるのではなく、まずは相続放棄に詳しい弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。
当事務所では、3か月経過後の相続放棄の受理を獲得した実績が豊富にございますので、ぜひ一度、お気軽にご相談いただければと存じます。

4 お客様の声

もう少し時間がかかるかと思いましたが、早く解決できて良かったです。

※クリックすると拡大されます。