1 背景

40代の男性から、亡くなった兄(被相続人)の遺産について、ご相談をいただきました。
被相続人の遺産としては、預貯金(約1800万円)が残されており、相続人として被相続人の子がいました。
もっとも、被相続人は、子がまだ幼かった頃に、元妻をその子の親権者として離婚していて、それ以来、その子とは長年会っておらず、連絡を取ることもなかったとのことでした。
さらに、被相続人が残したメモには、遺産は弟に取得させたいということが書かれていました。
しかしながら、遺言書としての要件を満たした書面は残されていませんでした。

お客様は、できる限り被相続人の意思を尊重し、実現させる形で解決したいとのことで、当事務所にご依頼いただきました。

2 当事務所の活動と結果

当事務所の弁護士は、被相続人が残したメモの内容を確認し、第1順位の相続人である子(相手方)の所在を調査したうえで、相手方へ、被相続人が亡くなったことを知らせる手紙を送りました。
そして、さらに、被相続人が残したメモの存在とその内容を伝えて、被相続人の意思の実現に理解と協力を求める内容の手紙を送りました。

すると、相手方から、こちらの要望に応じて、相続放棄するとの返答がありました。
そして、当事務所の弁護士が相続放棄の方法を丁寧に案内することで、手続を取ってもらうことができました。
その結果、(第2順位の相続人である父・母はすでに故人であるため)第3順位の相続人であるお客様が、預貯金1800万円の遺産を相続することで解決することができました。

3 所感

本件では、当事務所の弁護士の交渉に応じて、相手方が被相続人の意思を酌んで相続放棄の手続を取ってくれたことで、お客様が被相続人の遺産を相続して、被相続人の生前の意思を実現することができました。
もっとも、相続するかどうか(相続放棄するかどうか)は、あくまで相続人本人の自由な意思で決められるものですから、いくら被相続人の意思が明確であったとしても、遺言書がない限り、その被相続人の意思の実現を強制することはできません。
やはり、相続人ではない者に遺産を継がせたいとか、特定の相続人だけに遺産を継がせたいという場合には、生前にきちんと遺言書(特に公正証書遺言)を作成しておくべきであるといえます。