特別受益とは、相続人の誰かが、自宅購入資金の援助や生前贈与など、被相続人から生前に受けた特別な利益のことを言います。寄与分とは、相続人の誰かが、無給で被相続人の事業を手伝って被相続人の財産を増やした、会社を辞めて被相続人を介護したことで介護費用の支出を抑えたなど、被相続人の財産形成や維持に特別の寄与をしたことを言います。

遺産分割において、特別受益が認められる場合にはその相続人が取得できる相続分を減らし、寄与分が認められる場合にはその相続人が取得できる相続分を増やすことが法律上認められています。そのため、遺産分割の際には、「長男は被相続人から生活費の援助を受けていたのだから、相続分を減らすべきだ」、「自分は被相続人を長年献身的に介護してきたのだから、法定相続分よりも多く取得したい」などの主張がなされることが少なくありません。特に相続人間で感情的な対立がある場合には、特別受益や寄与分に関する主張が出されるケースが多いように見受けます。

しかし、特別受益や寄与分の主張は、なかなか認められるのが難しいのが実情です。最高裁判所が公表した平成27年の司法統計によると、遺産分割案件のうちの認容・調停成立件数の総数8181件に対し、特別受益が考慮されたものが718件(8.8%)、寄与分の定めのあった案件数が153件(1.9%)に過ぎませんでした。

なぜ難しいのかと申しますと、特別受益に関しては、裁判所が判断するうえで証拠の有無が重要になってくるところ、不動産であれば登記名義の変更等で生前贈与の事実が比較的容易に証明できることが多いものの、お金の援助や贈与については何十年も前のことであったり、現金での受け渡しであったりするなどで明確な証拠が残っていないことが少なくないのです。結婚式の費用や結納金など、特別受益となるようでならないものも多いです。寄与分についても、同様に証拠の有無の問題があるほか、例えば親の介護をしてきた場合であっても、それほど重い介護負担ではなく親族間の扶養義務の範囲内と認められる場合や、介護をする代わりに親の家に家賃の負担なく住まわせてもらっていた場合など、特別の寄与とまでは評価されないこともあります。また、寄与分が認められるのは相続人だけであるのが原則で、相続人以外の者による特別の寄与は遺産分割においては評価されないのが原則です(ただし、相続人の配偶者が被相続人の介護を行ってきた場合など、相続人の意向により補助者として行ったものと評価されれば、相続人の寄与分として認められる余地があります)。

このように、特別受益や寄与分が認められるためのハードルは、低くないのだとご理解いただければと思います。そして、特別受益や寄与分については、立証が可能で認容されるべきものはしっかりと主張していかなければなりませんが、認められることが困難と判断される主張にあまり固執してしまうと、相続人間の感情的な対立を深め、紛争を複雑化させる原因となることもありますので、注意が必要です。

特別受益や寄与分について、ご不明のことがありましたら、お気軽に当事務所にご相談いただければと存じます。

(弁護士・木村哲也)

八戸シティ法律事務所の弁護士が書いたコラムです。

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