それぞれの遺言書について、①日付を確認する、②遺言書の要件を満たしているかどうかを確認する、③それぞれの内容で抵触(矛盾)する部分がどこかを確認するということが必要となります。

まず、それぞれの遺言書について、①日付を確認します。
遺言書は、被相続人の最後の意思を尊重するものですから、日付が異なる複数の遺言書がある場合には、日付が最新のものが優先します。

ところで、遺言書には大きく分けて公正証書遺言と自筆証書遺言とがあります。
なんとなく、公証役場で厳格な手続のもとに作成された公正証書遺言の方が自筆証書遺言よりも優先しそうに思われがちです。
しかし、公正証書遺言と自筆証書遺言とが発見された場合であったとしても、日付が最新のものが優先することに変わりはありません。

次に、それぞれの遺言書について、②遺言書の要件を満たしているかどうかを確認します。
いくら日付が新しくても、遺言書の要件を満たしていなければ、遺言書として無効なものとなってしまいます。
なお、日付の記載がない遺言書は無効です。

最後に、③それぞれの内容で抵触(矛盾)する部分がどこかを確認します。
日付が最新の遺言書が優先しますが、優先するのは、前の遺言書の内容と抵触(矛盾)する部分についてです。
そのため、前後の遺言書が互いに無関係な内容であるとか、両立する内容であるなどの場合には、どちらの遺言書も有効です。

例えば、ある男性が預貯金1000万円、株式200万円、自宅不動産を残して亡くなったとします。
相続人は長男、次男の二人です。
ここで、いずれも遺言書の要件を満たした二つの遺言が発見されたとします。
一つは、令和元年5月1日に作成された公正証書遺言で、「財産の全部を長男に相続させる」という内容であったとします。
そして、もう一つは、令和元年8月1日に作成された自筆証書遺言で、「自宅は次男に相続させる」という内容であったとします。

この場合、日付が最新の令和元年8月1日に作成された自筆証書遺言が優先します。
そして、優先するのは、内容で抵触(矛盾)する自宅についての部分です。
したがって、預貯金1000万円、株式200万円は長男へ、自宅は次男へ、というのが遺言書によって実現される内容となるわけです。

このように、遺言書が複数発見された場合には、日付のみならず、遺言書の要件を満たしているかどうか、さらに、その内容についても慎重に確認して対応しなければなりません。
遺言書が複数発見された場合には、まずは相続の専門家である弁護士にご相談されることをお勧めいたします。