1 背景

60代の女性から、亡くなった弟の相続放棄についてご相談をいただきました。

被相続人はお客様の弟だったのですが、被相続人には配偶者や子どもがいなかったため、お客様の母が相続人となっていました(なお、お客様の父は既に亡くなっていました)。
そして、弟には借金があったため、母とお客様ご自身が相続放棄をしたい、とのことでご依頼をいただきました。

2 当事務所の活動と結果

まず、現在の母の状況をお聞きしたところ、「認知症で施設に入所していて、弟が亡くなったこともわからない状況である」とのことでした。
そのため、母の相続放棄に先立って、母の成年後見人を選任する必要がありました。
そこで、当事務所の弁護士は、お客様を成年後見人とすべく、家庭裁判所に成年後見人選任申立てを行いました。
その結果、これまでお客様が母の金銭を管理してきた経緯を踏まえ、無事、お客様が成年後見人に選任されました。

次に、母が相続放棄を行うにあたって、成年後見人であるお客様が母の次順位の相続人であることから、法律上、お客様自身では母の相続放棄手続きを行うことができないという関係にありました。
そのため、当事務所の弁護士は、家庭裁判所に、母の相続放棄をさせるための特別代理人の選任申立てを行いました。
その結果、当事務所の弁護士が特別代理人に選任され、スムーズに相続放棄を行うことができました。

そして、最後に、当事務所の弁護士がお客様の相続放棄を行い、相続放棄が受理された結果、当初の依頼目的を達成することができました。

3 所感

相続人が高齢となっている場合、本件のように、認知症を患っていることは決して珍しいことではありません。
本件では、被相続人が弟で、その相続人が高齢の母、という事案でしたが、特に多いケースとしては、高齢の夫婦の一方が亡くなり、もう一方が認知症に罹患している、というものが挙げられます。
このように、相続人が認知症になって判断能力が衰えている場合には、相続人ご自身で有効に相続放棄をすることができないため、まずは成年後見人を選任する必要があります。

さらには、本件のように、成年後見人となった人が成年被後見人よりも後順位の相続人である場合には、成年後見人の地位において成年被後見人の相続放棄をすることができないため、特別代理人の選任が必要となります。

このように、相続人の状態や相続順位によって、相続放棄に先立って複雑な手続きを経ることが必要となるケースがあります。
複雑な法的手続きに対応するためには、専門的な知識が不可欠であるため、まずは弁護士へのご相談をお勧めいたします。

4 お客様の声

突然の事で何もわからず相談して手続してもらいありがとうございました。
親身になって私の力になっていただき本当にありがとうございました。

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